薬剤師とは

■ 薬剤師は身近な「街の医療人」

お年寄りから小さなお子さんまで、薬を服用したことのない方はおそらくまれでしょう。その薬が開発・製造され、病院や薬局を通じて生活者の手に届くまで、すべての段階において薬学の専門家として薬の安全性に責任を負っているのが薬剤師です。
薬剤師といえば、医師の処方箋にしたがって薬を出してくれるイメージが先行し、薬局は「薬を調剤してもらうところ」と生活者の9割が考えています。

しかし、薬剤師に求められている社会的役割ははるかに広く、薬剤師法の第1条には次のようにあります。
「薬剤師は、調剤、医薬品の供給その他薬事衛生をつかさどることによって、公衆衛生の向上及び増進に寄与し、もつて国民の健康な生活を確保するものとする。」
薬には、医師の処方箋にもとづいて薬剤師が調剤する医療用医薬品と、処方箋なしで買える一般用医薬品(OTC薬:Over the Counter)の大きく2種類があり、調剤及び調剤時の服薬指導や情報提供は薬剤師の最も代表的な業務です。しかし、薬剤師の役割には、地域の生活者一人ひとりの健康づくりに寄与することまでが含まれていることがわかります。
グラフにある「薬について相談できる」「健康や病気のことについて相談できる」「OTC薬などを購入する」「薬や病気以外の事でも、気軽に相談できる」ことも、薬剤師がまっとうすべき役割なのです。 また、医療法という法律では、薬剤師が医師、歯科医師とともに「医療の担い手」とされています。具体的には、調剤や医薬品の供給、在宅医療への貢献などを通じて、薬剤師は医療人としての存在感を高めつつあります。
薬剤師には、街の薬局を訪ねれば、いつでも会うことができます。薬学は薬という化学物質を扱うため、かつての薬剤師は「街の科学者」と呼ばれましたが、薬剤師は気軽に相談できる身近な「街の医療人」でもあります。

 

■ 地域のプライマリ・ケアに貢献

薬剤師は、体調のすぐれない方が薬局を訪れた際に、症状の訴えなどから、医療機関への受診勧奨、一般用医薬品(OTC薬)による対応、生活指導、のいずれかに振り分け、適切な対応を提案しています。
こうした業務を、最近では「薬剤師によるトリアージ」と呼び、薬剤師が地域のプライマリ・ケアにおいて果たす重要な役割となっています。 「トリアージ」という言葉は、本来は災害医療や病院の救急外来において、患者さんの重症度を識別し、治療の優先度を決定することで、「薬剤師によるトリアージ」とは、この言葉を転用したものです。

本会の調査によれば、OTC薬の購入や相談を目的に来局された方のうち、指名されたOTC薬での対応が不適切と薬剤師が判断したケースでは、半数近く(46.1%)で薬を販売せず、その大半でかかりつけ医などへの受診勧奨が行われています。また、販売したケースでも4割(41.6%)が薬を変更していました。

実際、このような薬剤師トリアージが病気の治療や副作用のリスク軽減に役立ったケースは枚挙のいとまもありませんが、以下にその例を紹介します。

日本プライマリ・ケア連合学会では、プライマリ・ケアを「身近にあって、何でも相談にのってくれる総合的な医療」と定義していますが、薬剤師はこうした日常の業務を通じて、地域のプライマリ・ケアに寄与しているのです。

■ 薬剤師の職場の半数が「薬局」

厚生労働省の調査によると、全国の薬剤師の数は276,517人※とされ、男女比では男性39.1%、女性60.9%と女性が多く、年齢区分では30歳代(25.8%)、40歳代(22.5%)の順となっています。 また、薬剤師の勤務場所は、半数(52.7%)が薬局で、次いで病院・診療所(18.8%)、製薬会社等(17.7%)などとなっています。

 

海外に先駆けて、1930(昭和5)年から日本に導入された独自の制度に、学校薬剤師があります。学校保健安全法にもとづき、幼稚園から高校まで、のべ5万人を超える学校薬剤師が水道水やプールなどの水質、アレルギー原因物質、食中毒などの衛生管理、飲酒・喫煙防止、薬物乱用防止、さらには薬の適正使用に関する知識の普及や啓発活動など、多岐にわたる職務に従事しています。